オープンAI迷走の意義
2025年06月27日 [ 社長コラム ]
過ごしやすい時期は短く、恵みの雨の季節となりました。
今月は日経新聞オピニオン欄、「オープンAI迷走の意義」について書きます。
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営利企業が全面に出る経営には移行せず、NPOを中核とする体制を維持する。
米国オープンAIが5月5日発表した。
営利化の道を走ってきたサム・アルトマンCEOにとって足かせとの見方が多い。
別の視点もある。テクノロジーで社会に報いながら成長する最強の組織のモデルを示し、
歴史に名を残す絶好の機会を得た、と。
GAFAMのような巨大企業を生む営利のメカニズムは米国の強みだが、それだけではない。
NPOの発展こそ1950年代以降の米国が真に誇るべき偉業だ、
経営学の権威、ピータードラッカー氏は訴えた。
ボーイスカウト、教会、病院、慈善団体、人権という重要分野を導き担うNPOが大量にある。
社会を変えるのは市民という意識を育んできた。
汎用人工知能(AGI)の恩恵を全人類に、壮大な目標を掲げるオープンAIが
イーロンマスク氏らの寄付を使い、NPOとして出発したのはNPO大国では自然な選択だった。
AI開発が巨額と知ると組織の営利化に踏み出し、資金調達を繰り返すようになる。
一方で人類に牙をむきかねないAIの提供に前のめりなのは危ないとの批判がやまない。
迷走に見えるが、営利、非営利2つの系譜の交差は時代の要請でもあるだろう。
スケールを追う営利と、一握りの投資家らの利益に左右されず、公共性に重きを置く非営利、
両方の良さを有効に束ねる仕組みをつくれば、優れた人材を集める求心力にもなる。
アルトマン氏が注目するのは米アウトドア用品のパタゴニアを見れば分かる。
同社は環境に配慮した製品作りで知られるブランド力もあるが、
創業家が持つ全株を新設の目的信託とNPOに寄付した。
故郷である地球を救うためにビジネスを営む、と定めた目的を
長きにわたり揺るぎないものとする経営の形だ。
21世紀の営利企業は利益一辺倒では無く幅広い利害関係者に目を配る必要がある。
NPOも資金確保の多様性、運営の効率化に知恵を絞らないといけない。
互いから学ぶ余地がある。
オープンAIの試行錯誤は、営利と非営利が近づく時代の組織設計のヒントとなり得る。
成功しても失敗しても、アルトマン氏が本気で取り組む限り、いずれ経営の教科書に載るはずだ。
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オープンAIがNPOから出発したとは知りませんでした。
営利企業をNPOが支配する経営形態も知りませんでした。
営利目的はともすれば利己に陥り、非営利は利他とも言えますが、利益がなければ
事業の継続拡大は難しく、相反するものを両立するという発想の転換には驚きます。
まさに社会課題を解決する社会貢献ができるなら優れた人財、知性が集まるでしょう。
現代の若者は、私たち世代よりも社会貢献に対する意識は高いと私は感じています。
ものも情報も満ちあふれた時代、何のために自分は生まれてきたのか、真剣に考えています。
それを実現するのは、営利非営利の二択では無く、事業を通じて社会に貢献する利他の企業活動、
つまり稲盛塾長が掲げておられるフィロソフィの実践によって可能なのではないでしょうか。
JEI創業者は命を守る技術を拓くことを目的として事業を興しました。
私たちJEIパーソンはそれを引き継ぐ者として、利他の企業活動を続け、
社会の中で求心力を保つ企業になりましょう。今月もありがとうございます。
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株式会社JEI
山之口良子